新たな彼方へ踏み出せなかった「ここ」から(正解するカド最終回について)

正解するカドのオープニング「旅詩」がとても好きです。メロディックでいて懐かしいSFの匂いがする、すてきなメインテーマであると思います。

最終回では終盤にこの曲がかかって、「新たな彼方にここから行けるのだろうか」で(行けなかったね…………)って落ち込んで泣いてしまった。悲しいことです。

11話まで見てキレ散らかした記事で、

wtrdr.hatenablog.com

SF的世界観において、人類存亡レベルの話をしているときに前触れなく主要キャラクターの恋愛展開が挟まるとキレてしまうんですが私の心が狭いのかな?

という言葉を書きましたが、あの急速な恋愛展開には一応意味があったんだな…… とわかりたくない事実をわからされた最終回でした。人類と異方のハーフこと、真道と沙羅花の娘たるユキカ(幸花?)が切り札だったんですね。

子どもを作ってそれを使ってザシュニナを驚かせよう、切り札にしよう、花森には16年がんばってもらおうってアイディア、この流れからいくと真道から出た案なのかなと思うけど、双方を満足させる交渉官として優秀なはずである真道から出たにしても、地球と人類の自然な営みが素晴らしい! 派な沙羅花から出たにしても、随分おぞましい着地点に行ったなと思いました。人格変わってない? 大丈夫……?

前半のザシュニナのターンでは異方へ真道を誘うも断られ、強硬手段も自らの願いへの理解が及ぶに至って選べなくなり、「かけがえのない個人」とか「1を1以上として見ることが人類の特異性」とか、なかなかいい線いってるしSFにおける良いエモさじゃないですか…… と視聴者として勝手にとても悦に入っていたんですが、

真道のそれを断る根拠が「生まれ育った世界を愛しているから」ってちょっとあまりにもお前それはなくない? という安易さでがっかりしました。言い訳にしてももっとさ…… 賢そうな言葉が聞きたかったな……

あと断られて強硬手段もやめたのに真道を終わらせたがったザシュニナは、考え始めるとよくわからなくなる行動原理なんですけど、あれはザシュニナが感情を獲得したがゆえの、感じるタイプの行動原理という理解でいいんでしょうか。これ以上齟齬が膨らむ前に完結させたいみたいな……?(もうだいぶ決定的な齟齬だったけど……)

真道に「友だち」って言われたときのザシュニナの微妙な表情が心に残りましたね。あとよっしゃ殴るぞって顔の真道と、気が進まないながらも剣を振りかぶるザシュニナ…… 真道への感情ゆえか、それとも、予測できてたからあれはつまらなかったのかなやっぱり…… いずれにせよかわいそうだな……

一方でそのときの沙羅花は、真道が本当に大事なら見てるだけじゃなくて加勢するべきだし、加勢できるのにしなくてあとで取り返しがつかなくなってから叫ぶヒロインが嫌いなので、あの叫びにはだいぶ冷めました。(それとも沙羅花、やはり人類≒真道に対してニュートラルだったのでは……?)

前回の記事にも書いた、

沙羅花とザシュニナの双方共に、人類以前に真道に執着してしまうと、一気に世界が狭くなってしまう気がするんですよね。

というのがこれでもかと最終回にも影響を及ぼしていましたね。主要人物があまりに狭い世界でやっているので、ときどき入る首相官邸シーンで(アッ、この人たち真面目だな……)って思ってしまった。臨機応変に動く役人の出てくる作品がもっと見たーい!

ユキカに関しては、その出生の理由や意味やきっかけにはだいぶ真道か沙羅花のキツい策略があったなというのと、16年間を捧げた花森への周囲からの当たりがだいぶキツいのと、ザシュニナにそこまで暴力振るわなくてもよくない?!? ボロ雑巾みたいに扱ったらかわいそうでしょ! というのを置いておけば、

ザシュニナを終焉させる装置として申し分ない働きをしたし、「進歩とは自分を終わりであるとせず、途中であるとすること」という新奇性があり魅力的な「正解」をザシュニナに告げる役割として素晴らしかったなと思います。

さらにいえば、ザシュニナは4次元より確実に上位なので真道の霊的なものと交信できそうなのにできず、一方で情報を超えるものであるユキカは多分できている、というのが残酷でいい。ユキカはザシュニナのことをそこまで悪いやつじゃないって評したけど、ユキカが圧倒的な人類にとっての善としてあの場に降臨したことで、ザシュニナの人類にとっての悪としての属性が強調されたのでなかなかな皮肉だったと思います。

ザシュニナの敗因は、真道に感化されすぎたことと、あまりに人類に対して免疫がなかったことでしょうか。もっと異方存在としてブレなければ真道をちゃっちゃと異方変換してズブズブな関係に持っていけたよね…… 真道そのへん芯があるから、内面が侵されるとかそんなに心配しなくてもよかったんじゃないかと思う。ザシュニナのほうがそのへん弱かった。

真道は双方を満足させる交渉官を自称していたはずなのに、暴力・自爆・後世に強制的に託す。って無理な手法をドンチャンやってしまうので、見ていてそれはないやろ感が強かったです。ユキカはあのあとすぐ消え去ってしまったけど、そりゃ消え去るよね。16年間そのためだけに育てられてきた道具としてあっさりと使い終わられたから、もう尽くしたくないんじゃないか。それにしても花森はかわいそうだと思う。花森の誕生日にだけ帰ってくるユキカください。

そしてユキカによって異方からもたらされた道具が無効化されたの、プリキュアが戦ったあと街が自動的に回復するやつみたいで笑ったんですが、ワムの恩恵を受けていた人々とかいるわけで、それなりに残酷なことなんじゃないかと思います。無効化されずに遺産をどう活用していくか牽引する人として品輪博士がいたらいいのにな〜って思ってたけど品輪博士は行方不明だし…… たぶん異方に……

そうやって不完全燃焼に苦しんでいるところへ「新たな彼方へここから行けるのだろうか」って旅詩が始まったので、行けなかったね…… って泣いてしまったんですよね。

沙羅花はこの収束を望んでたのかな?

ザシュニナに会いに行こうって人類は動き始めたみたいなラストだったけど、あれは最初で最後、一回きりのコンタクトだったんじゃない?

そもそもザシュニナはユキカに消滅させられたんじゃないの? 地球世界から追放されただけ?

疑問点が多くてだいぶもやっとしていますが、美しく見事な正解をくれるはずだった真道はもういないので、正解するカドはこれでおしまいなんだと思います。

SFアニメとしてほんとうに色々魅力的な部分もありつつ、途中で方向転換に置いてかれてしまって、個人的にはとても悲しい結末でした。

異方存在を力で排除しながら(あの場にいた人間以外は分からないのかもしれないけど)今度は我々が会いに行こうっていうのは、うまくまとめようとして的が外れている気がする。

あと、ノーマークだったチート美少女が出てくるのは物語内において一回で十分だったというのもあります。

部分部分では好きなところもあるアニメなんだけど…… と、複雑な気持ちで見終わりました。

いやでももっとSFアニメ見たいな…… 原案だけじゃなくて、演出・脚本も筋の通ってるのが……

(今もっともアニメ化してほしいSF、華竜の宮をよろしくお願い申し上げます)

 

華竜の宮(上) (ハヤカワ文庫JA)

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華竜の宮(下) (ハヤカワ文庫JA)

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