祝!貴族探偵ドラマ化

耶作品がドラマ化されたら、世界は一変するかもしれない。

というよくわからない謎の期待を胸に抱きつつ、春の月9を待っている。

 

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んなポエムはひとまずとして、2017年の2月に、4月からの月9ドラマ『貴族探偵』の放送が発表された。原作は麻耶雄嵩著『貴族探偵』『貴族探偵対女探偵』。

貴族探偵 (集英社文庫)

貴族探偵 (集英社文庫)

 
貴族探偵対女探偵 (集英社文庫)

貴族探偵対女探偵 (集英社文庫)

 

それぞれ集英社より出版された連作短編集である。

(ドラマ『貴族探偵』公式サイトはこちら 貴族探偵 | オフィシャルページ - フジテレビ )

自らを「貴族」で「探偵」と名乗る青年が、自ら謎を「解かない」。そんな驚愕のミステリ小説を原作としているこのドラマは、月9の30周年記念枠で製作が現在進んでいる。奇しくも原作者・麻耶雄嵩氏の作品がカテゴライズされる「新本格」というミステリのジャンルも、今年で30周年を迎えており、もはや運命なのではないかと思う。

(新本格30周年公式サイトはこちら

www.mystery30th.com )

演は嵐の相葉君。嵐の! 相葉君! これだけでもう、膨大な人数に及ぶ相葉君ファンがドラマを見てくれるという期待に心臓がキュッとなっているいち麻耶ファンである。

相葉君が演じるのは主人公「貴族探偵」。先述した自ら謎を解かないという不思議なキャラクターだ。彼は使用人を手足とみなし、謎も使用人たちに解かせる。自らの手足でありかつ所有物である使用人たちの解いた謎は、すなわち「貴族探偵」たる自分が解いた謎。そんな理屈を語る男を相葉君がどう演じるのか、めちゃめちゃ期待している。

 

囲を固めるキャストもあまりにも豪華だ。「貴族探偵」の使用人枠として、孤独のグルメのゴローちゃんこと松重豊半沢直樹で精神を病んだりカラマーゾフの兄弟でキレッキレの取り調べをしたりしていた滝藤賢一TRICKの山田こと仲間由紀恵すべてがFになる西之園萌絵嬢こと武井咲(出演作セレクトはいずれも趣味)、エトセトラエトセトラ……「ハイ、優勝ーーーーー!!!!!」と勝訴半紙ならぬ優勝半紙を掲げたくなるような豪華キャスト……!!! 神様仏様鈴木太郎様ありがとうと五体投地したくなってくる(※鈴木太郎とは麻耶雄嵩著『神様ゲーム』に登場する小学生の姿をした神様の名前である)。

神様ゲーム (講談社文庫)

神様ゲーム (講談社文庫)

 

 しかすると、『貴族探偵』と聞いて『富豪刑事』を思い出す方もあったかもしれない。しかし深キョンでさえ自ら捜査し推理していた。貴族探偵は事件の捜査も推理も使用人にやらせ、自らは事件関係者の美女を口説いているようなキャラクターである。それに敵対するのが新米女探偵の高徳愛香。原作にほぼ準拠したといえるドラマのあらすじの中で、唯一大きく変更されていたのがこの高徳愛香の師匠である探偵の性別である(原作では男性だが、ドラマでは女探偵に変更。井川遥が演じる)。女探偵同士の師弟関係がどう描かれるのかも楽しみだ。

 

こで冒頭のよくわからないポエムに立ち戻る。

“麻耶作品がドラマ化されたら、世界は一変するかもしれない。”

一体どんなざれ言かと思われるだろうが、麻耶雄嵩の書くミステリはとにかく異質なのである。今回ドラマ化が決まった『貴族探偵』にしても、「探偵」と名乗りながら当の本人は推理の「す」さえもしない。発売時の著者インタビューにて、こんな興味深いやりとりもある。

インタビュアー 最後に、無理なお願いになりますが、ノベルスの著者のことばが、読者にたいへん好評を博しています。本作はノベルスではありませんが、ここで『貴族探偵』にも著者のことばをいただけませんでしょうか?
麻耶 わかりました。(少し考えてから)――「これぞ名探偵」

貴族探偵|集英社 WEB文芸 RENZABURO レンザブロー

ドラマ化決定の報を報じた2月10日発刊の各スポーツ紙でも、

「探偵相葉は推理をしない(スポーツニッポン)」

「貴族相葉は推理しない探偵(中日スポーツ)」

「捜査や推理はせず、実務は召使い任せ(日刊スポーツ)」

「推理せず解決(スポーツ報知)」

などの見出しが躍っていた。

(スポーツニッポンは原作文庫版の題字に見出しを似せてきていて最高)

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耶雄嵩は『翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件』でデビューして以来、探偵の役割について実験を繰り返してきた作家だ。デビュー作の副題からして、一作目にして「メルカトル鮎最後の事件」である。(※メルカトル鮎とは麻耶雄嵩作品にたびたび登場する銘探偵。名探偵ではなく「銘」探偵である)

また、デビュー作の『翼ある闇』は近年講談社ノベルス講談社文庫から復刊されたが、二作目にあたる『夏と冬の奏鳴曲』に始まる三作の長編、『翼ある闇』に登場する名探偵・木更津悠也(こちらは「名」探偵)の活躍を描く連作短編集『名探偵 木更津悠也』等、絶版になっている作品もある作家である。今回月9ドラマの原作者として今まで以上に名が知られることで、それらの作品にも復刊の機会が訪れるのではないかと期待するファンも多い。(K談社さまでもS英社さまでもいいので復刊を何卒よろしくお願いいたします!!!!!)

夏と冬の奏鳴曲(ソナタ) (講談社文庫)

夏と冬の奏鳴曲(ソナタ) (講談社文庫)

 

 んなわけでなにもまとめられていないが、貴族探偵のドラマ化はとにかくめでたい。原作小説の『貴族探偵』、『貴族探偵対女探偵』を読む人が増えればすなわち麻耶雄嵩作品を読む人が増えるし、あわよくば他の著作も読んでもらえるかもしれないし、さらにあわよくば他の作家のミステリ小説も読んでもらえるかもしれない。ハッピーハッピーです。わーい!

というわけで、貴族探偵を読んで「この作家! 面白いぞ!」となった人におすすめするのは同じく集英社文庫から出ている『メルカトルと美袋のための殺人』という短編集(ただし後書で『翼ある闇』のネタバレがあるので注意)。

メルカトルと美袋のための殺人 (集英社文庫)

メルカトルと美袋のための殺人 (集英社文庫)

 

 麻耶雄嵩先生が探偵だけでなく助手についても色々試しているのがわかるし、その続編である『メルカトルかく語りき』(こっちは講談社文庫)まで読めば、探偵が謎を解くことについてつきつめたとき、その眼前にはどんな異様な世界が待っているかを垣間見ることができる。

メルカトルかく語りき (講談社文庫)

メルカトルかく語りき (講談社文庫)

 

 

度となく言われた言葉だが、ミステリは楽しい。

ドラマ『貴族探偵』が楽しく面白いすてきなドラマとして完成することを心待ちにしている。